におしず

ギブミー

「ん」「え、っと……?」今日は珍しくテニス部の活動がお休みということで一緒に帰ることになった雅治先輩と私はいつもの帰り道を並んで歩いていた。他愛もない話をしながら歩いていると、雅治先輩が急に立ち止まる。どうかしたのかと私も歩みを止めたところ…

「おまん、それは見逃せんぜよ」

それは小さな鳴き声だった。春の温かな風に乗ってやって来た、誰かを、何かを呼ぶようなその声に引かれるように、少女――広瀬静は歩む。側から見れば、ふらふらとしていて一見すれば危うい足取りで進んだ先に見つけたのは、校舎の裏で丸まる小さな白い毛玉。…