What color is the color of the underwear?

「お! 特待生!」
「はい、何でしょう?」

本番も間近に迫っていて、皆が慌ただしく、そして世話しなく右往左往している最中、呼び止められる。呼び止められたということは何かしら用件があってのこと。どうかしましたか? と呼び止めた相手――青柳先輩の元へ小走りで駆けていく。
目の前までやってきて、青柳先輩はにっと口角を上げる。
あ、なんか嫌な予感がする。

「今日の俺のパンツは何色でしょうか?」
「セクハラですよ」

ぴしゃりと言い切って、思い切り眉間に皺を寄せる。
どうしてこう忙しい時に限ってこの人は……!
もう、と踵を返そうとしたところで青柳先輩は「悪い悪い」と大して悪びれてもいない様子で謝罪の言葉を述べる。

「ちょっとはリラックスできたか?」
「……はい」

青柳先輩にそう言われるまで、自分がいかに切羽詰まった感じで動いていたのかを自覚する。本番前なのだしそりゃあ切羽詰まって仕方のないことではあるけれど、焦りは視界を狭めてしまう。普段できることができなくなってしまう。それを青柳先輩は目ざとく見つけてくれて、こうして解してくれた。……解し方に難ありと言えなくもないけれど。だけど、これでこそ青柳先輩というような、らしさがあった。

「ありがとうございます」
「別に礼を言われるようなことはしちゃいないさ。そういえば今日のパンツ新しいの下ろしてきたんだが見るか?」
「見ませんよ!」

お礼を言えばこれだもの!
今度こそ踵を返して、私は足早に場を立ち去る。だけど、うん。なんだか心はほんの少しだけ、軽かった。